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植田春汀書作展 鑑賞7 「芋の葉にこぼるゝ玉のこぼれこぼれ子芋は白く凝りつつあらむ」(長塚節)

  • harunokasoilibrary
  • 7月12日
  • 読了時間: 2分
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 長塚節は小説『土』で有名ですが、歌人としても大変優れた作家でした。節は1879年(明治12年)に生まれ、1915年(大正4年)に亡くなりました。『土』は夏目漱石の序文でも有名です。漱石を愛読していた私の母が、節の『土』に感動して「土」という一字書を書いたことで、私にも節は忘れることのできない作家になりました。

 節は正岡子規の愛弟子でした。子規は、節の才能と高貴で純粋無垢な人間性を愛しました。

節は、1908年(明治41年)の秋にこの歌を詠みました。29歳のときです。節が写生をこえた、目には見えない世界を表現しようと模索していたころの作品です。節と自然との深い関係から、目には見えない自然の摂理を言葉にしようと努力していたのでしょう。

 春汀さんの作品を鑑賞しましょう。紙面の上下に分けて書かれています。上下の文字群の間には、不思議な余白が、自然の摂理を表すかのように深く広く横たわっています。上部の塊は、繰り返し点の表現が下方への運動を感じさせます。下部の塊は、「子」や「し」や「ん」の縦に伸びた字形と運筆が上昇気流を感じさせます。その上下の、ぶつかり合いの間に、深い余白が在るのです。

この歌は、「コ」の頭韻が楽しいリズムを作りだしています。書もそれに和して、明るくリズミカルに書かれていますねぇ。

特に、「し」と「ん」との潤渇の変化(運筆の緩急)つまり、春汀さんのこころもちの変化が大変魅力的な線を生みだしています。

よく考えぬかれた作品ですねぇ。


春汀さんのコメントを転載しておきます。

「これも手本(47号)として書いたものです。」1996年制作 半切

2020-02-19 10:00:28

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