top of page

植田春汀書作展 鑑賞4 「河の邊のつらつら椿つらつらに見れども飽かず巨勢(こせ)の春野は」

  • harunokasoilibrary
  • 7月12日
  • 読了時間: 2分
ree

 春汀さんの初期の作品です。手本として書かれたこともあり、三色紙や粘葉本和漢朗詠集が下敷きになっています。

しかし、穏やかで、中庸な線質は、すでに、春汀さんのことばになっています。極端なデフォルメはありません。

これを習う人のことを慮って書かれたのでしょう。手本を書くなんて大それたことですから、私が強く勧めなければ、春汀さんは、決して手本などといった偉そうなものなど、書くはずがありません。

それでも、精一杯工夫され、誠実に書かれています。習う人はそこの所も感じとらねばなりません。

工夫の一つに、伸縮による落下の表現があります。落下する椿のイメージがあったのかもしれません。

例えば、一行目の「河の邊」「のつらヽヽ」「つばき」三行目の「こせの」「はるのは」は、縮伸、縮伸と、リズミカルな繰り返しで行が構成されています。そのリズムの単調さを補うように、二行目は、等間隔の穏やかなテンポに転調しています。

墨法は穏健です。かすかに揺れ動く感じの濃墨がひかえめに使われています。日比野五鳳の様な嫌味がありません。絵もかけない書家が、水墨の真似事をして、大家としてまかり通るこの国の書道界とは実に馬鹿げた世界なんですねえ。


春汀さんの作品集の御自分のコメントを転載しておきましょう。

「野のはな書道会の手本(43号)として書いたものです。万葉集から題材をとっていることもあり、ごく古典的・基本的な散らし書きの作品です。」1995年制作。サイズ;小画仙紙半切

2020-02-16 16:15:41

コメント


© 2025 Harunokasoi

無断の複製転載を禁じます

bottom of page