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植田春汀書作展 鑑賞15 「大江山いく野の道の遠ければまだふみも見ず天の橋立」(百人一首60・小式部内侍)

  • harunokasoilibrary
  • 7月12日
  • 読了時間: 2分
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 和泉式部の娘の、小式部内侍(こしきぶのないし)の歌が書かれています。

掛詞を使って、巧みに詠まれています。加悦の「大江山」と西京区の「大枝山」、「いく野」は、「野を行く」と福知山の「生野」、「ふみ」は、「踏み」と「文(手紙)」

 私は、テクニックを競って、ことば遊びに得意になっている、脳天気な貴族たちには、まったく興味がありませんけれど、春汀さんには、この歌が詠まれた経緯はさて置いて、何となく、遠く離れた故郷を彷彿とさせたのでしょうねぇ。


 この歌はどうでもいいですが、春汀さんの書を鑑賞してみましょう。

 紙面は、四季のように、四つのブロックに分けられていますが、時間の象徴でしょうか。春汀さんの述べているように、各行頭が、なだらかで、悠然とした大江山の稜線の様に上下して置かれ、最初と終わりにある濃墨が、水墨画のような奥行きを表し、絵画的な空間を描いています。

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また、ふるさとを想う、そよ風になびく草花のように、かすかに傾いた行は抒情的で、郷愁を誘います。行の字数と連綿も、3、3、2、 3、2、3、2、 2、2と繰り返され、ゆったりと歩くようなリズムを感じます。

点画は、ほぼ蔵鋒で深く書かれ、尖ったところがありません。字形は、ふところが広く、何かを包みこむような、暖かさと、やわらかさが感じられます。

この、どうでもいい和歌が、春汀さんの書によって、春汀さんの言葉に変容しているのです。書って素晴らしいですねぇ。


下に、春汀さん御自身のコメントを転載しておきます。

「ふるさと大江山のなだらかな稜線を思い浮かべて配置しました。」 2005年制作

2020-02-27 10:58:00

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