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植田春汀書作展 鑑賞10 宮本百合子の言葉「うららかな春は きびしい冬のあとから来る。可愛い蕗のとうは 霜の下で用意された。

  • harunokasoilibrary
  • 7月12日
  • 読了時間: 2分
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 私は、イデオロギー的な言葉には、全く感じませんが、春汀さんは感じるのでしょうか。それは、私には理解することがとても難しいです。私は、このような言葉に励まされることはありません。それはさておいて、書を見てみましょう。


 紙面は宇宙の代わりです。ほぼ半分を占める上部の余白から光が差している様に構成されています。その温かい光と風に向かって、生き物が伸びようとしているかのように行が構成されています。点画は柳葉線の繰り返しで構成されています。柳葉線は、中国の書家も古くから書いていますが、余り見かけません。日本の仮名の線がそれに近いでしょう。しかし、その線には中国の漢字のような強さや激しさはありません。春汀さんの柳葉線には、やさしさと温かさが、そこはかとなく漂っているようです。うすい墨色と、ところどころにある、ひかえめな濃墨が温かさを増幅しています。このやさしさの背後には、強靭な強さが潜んでいるのでしょう。それが春汀さんの言葉です。宮本百合子の言葉が、書を通過することによって、春汀さんの言葉に変容しているのです。宮本百合子の言葉なくしてこのような書は生れなかったでしょうけれど、大事なのは宮本百合子ではありません。春汀さんの書の言葉です。


春汀さん御自身のコメントを転載しておきます。

「20代の頃からいつも心に刻みながら、生きる励みにしてきました。先生から「温かい風が吹いているようだ」と批評してもらい、嬉しかったです。」 2000年制作

2020-02-22 11:01:52

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