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「蝉を彫る」(高村光太郎の詩) 作品220

  • harunokasoilibrary
  • 10月19日
  • 読了時間: 2分
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Haruno Kasoi 書 「蝉を彫る(高村光太郎の詩)」

 1997年   宣紙・墨・額

額装は、京表具春清堂の田端彰子さんです。

何も主張せず、本紙を生かしてくださいました。表装はこうでなければならないと思います。自己を主張するなんてちっぽけな事は考えないほうが自己が本当に生かされることにつながるのだ、と思いました。


冬日さす南の窓に坐して蝉を彫る

乾いて枯れて手に軽いみんみん蝉は

およそ生き身のいやしさを絶ち

物をくふ口すらその所在を知らない


蝉は天平机の一角に這ふ

わたくしは羽を見る

もろく薄く透明な天のかけら

この虫類の持つ霊気の翼は

ゆるやかにまだれて迫らず

黒と緑に装ふ甲冑をほのかに包む


わたくしの刻む檜の肌から

木の香たかく立つて部屋に満ちる

時処をわすれ時代をわすれ

人をわすれ呼吸をわすれる

この四畳半と呼びなす仕事場が

天の何処かに浮いてるやうだ


と書かれている。


わたしは、この詩の描いている仕事部屋と同じような、暖かい冬日の白い光に包まれて制作する悦びを知っている。

無心になって仕事する歓びを知っている。

わたしはこの詩を詠む高村光太郎と一体になった。

彼とわたしは同じ人種だと感じた。

このまま仕事をしながら呼吸をわすれて夢のように生き、死ねれば本望だと感じた。

母よわたしのわがままを許してください。

2018-12-19 09:13:10

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