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「ミゼレーレ4」(苦) 作品224

  • harunokasoilibrary
  • 9月28日
  • 読了時間: 2分

更新日:10月19日

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春野かそい書「ミゼレーレ4・果てしない苦海に あまりにも小さなマーガレットの花!」(苦・anguish)

2018年12月 約23.5×23.5㎝ 唐紙・墨

「苦」と書かれている。


筆を再び持とうと言って帰っていった女性は、この作品展をどのように見たのだろうか。彼女が、どのような道を通ってこの会場に辿り着いたのかは分からないが、通りで、ふと目にした案内状の看板の、見なれない図柄に興味を持って、会場への階段を登って来られたのだろう。階段を登り切ったところにあった墨書の看板も、不思議な絵のように思い、眺められたことだろう。何点か作品を見て、そこに描かれているものが文字であることに気づき始めた頃、天女さんの解説で、文字が書かれていることがはっきり分かり、確信を持って鑑賞を始められたに違いない。彼女は、これまで真剣(誠実)に生きて来られたのだろう。少なくとも、芸術鑑賞においては、誠実に目の前の作品に接してこられたのだろう。彼女の頭の中はめまぐるしく回転して、一から考えをまとめ始めたに違いない。「ミゼレーレ」という統一タイトルは「神よ憐れみたまえ!」・・・書かれている文字は「苦」・・・副タイトルは「果てしない苦海に あまりにも小さなマーガレットの花!」・・・、目に見える造形は、人を喰ったかのような悪魔の顔にも見える。表具の色は赤と黒、反転したような菱形の影、「苦海」は苦悩しかない人生のこと、小さなマーガレットの花とは?真黒な海に浮かぶ一片の白い花のイメージが絵のように脳裡を掠めただろうか?彼女の思い描いたイメージは強烈なものだったと、わたしは想像する。マーガレットの花言葉は「真実の愛」、そして、わたしの母が最も愛した花であった。彼女にそれが分かる筈もないが、その強く切ないわたしの思いは、彼女の心の中に強烈な白と黒の映像を呼び起したことだろう。彼女は、わたしの仕掛けた表現をほぼ正確にたどり、「ミゼレーレ」に託した、わたしのメッセージを受取ってくれたように想われる。


鑑賞には好き嫌いは当然あるだろうが、それは芸術鑑賞の本質ではない。芸術は好き嫌いを超えたものなのだ。好き嫌いだけで生きている人生は貧弱な人生である。それは人間だけでなく芸術をも貶める観念である。


どんなにくだらない馬鹿な男(女)でも、好きなものは好きなのだから、わたしはそれで幸せなのだから、人生はそれしかないじゃないの!理屈じゃないは!と、多くの人は思うだろうか。

2018-12-28 09:33:59

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