春野かそい個展鑑賞 愛は何処20
- harunokasoilibrary
- 6月7日
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愛は何処20(2020年9月制作 約100×148mm ケナフ紙に墨 ハガキに貼付)
あんなに美しかった木の葉たちは 木枯らしと旅立ってしまい 樹々はすっかり冬景色
ぼくは 寒いベランダで やわらかい曙光につつまれて 草花や木に水をやり メダカに餌をやる
寒さに身ぶるいしながら 弱く優しい光の洗礼をうけて 生き物たちに生の祝福をすることは 生き延びたぼくの悦びだ
この曙光のように初初しいあなたは初恋の人
あなたは女らしく綺麗で賢かった 若すぎた二人の恋は まだ早過ぎる と あなたの両親にきつく咎められた あなたは発狂しそうになって長い手紙をくれたのだった ジュリエットの気もちが解ると書いてあった ぼくは一緒に死ねばよかったのだろうか
嵐のような苦悩の日日がつづいた
あなたは中学を卒業したら西陣の織姫になった 賢かったけれど家の都合で学問の道はあきらめたのだった ぼくは学者のような少年だったから
あなたはぼくと同じ学校で机を並べたかったのだろう
ぼくが高校に入学したとき あなたは自分で稼いだお金で高価な万年筆を贈ってくれた 経験した事のない初めての悦びに涙があふれた ぼくは いつもそれを きれいに磨いて肌身離さず大切にしていた 同級生たちも先生も 美しい二人を羨みながら祝福してくれていた 切ない苦悩の中で忘れることのできない悦びの日日だった まだ寒い早春 夕暮れに二人きりで見た二輪の白梅のように 外は寒くても身体の芯は熱く萌えていた
制限された中で二人は逢っていたが逢っている時は気が遠くなるくらい嬉しかった このまま 親の反対を乗り越えて死で結ばれていたら ロミオとジュリエットになっていただろうに・・・・・・
その後 狂乱の嵐が吹き荒れ 破局がおとずれ 二人のおもいは ずたずたに引き裂かれた あなたは親の勧めるしっかりした社会人と結婚した
苦しくて死にたかったけれど 死ななくて良かった
愛するあなたに逢えたのだから
生きることより 死ぬことより
もっと大切なことを教えてくれた王子さま
年齢でもない 宗教でもない
愛に心ときめくことを
2020-12-29 14:48:49



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