愛の造形1 チャーリー・チャップリンの映画『ライムライト』のつづきの8
- harunokasoilibrary
- 6月6日
- 読了時間: 9分
こうも書いてある
”テリーは光り輝いていた” ”かろやかに花開くように” ”女神ダイアナを思わせた”
絶賛だ (このテリーの表情はなんだ!)
ついにやったね
一夜にして大スターだ
心ゆくまで泣けばいい
一生に一度のことだ
カルベロすぐに結婚しましょう
ここを離れ━ ━ 田舎で暮らすの 静かに そして幸せに
幸せ・・・初めてその言葉を口にしたね
毎日幸せよ
本当に?
もちろん 愛してるもの
年寄りにはもったいない
そんなことないわ
テリー 私のために人生を無駄にするな 君は若いんだもっと幸せになれる
カルベーロ!
私は出ていこう
何を言ってるの?
ここにいても━ ━ 私も苦しいだけだ すべて偽りだ
残された人生 真実と共に生きたい 真実 真実
それしか残ってない
真実だ それが私の望みだ それとわずかな誇り
出てくなら私は死ぬわ あなたなしでは人生に立ち向かえない なぜ分からないの?
愛してるのよ (カルベロの妄想?理想の愛への願望?)
愛じゃない!
愛よ!
愛してるのはネビルだ
違うわ!
彼が文具店に来た作曲家だろ
そうよ 話してなかったけど・・・
予言したろ”また会える”
テムズ川を見下ろすテラス
そんなんじゃない!
たそがれの中 彼が愛を告白 そして君も彼に・・・
彼を愛してなんかない!彼の音楽の世界に憧れてただけ!
君たちはお似合いだ
でも彼を愛してない昔も今も
お願いよ 私を信じて
━ ━ ━
━ ━ ━
バレエはいいが 道化がまずい あの道化は切る
エージェントに電話して代りを頼んでおいた
彼が誰かを?
カルベロとでも言うつもりか?
そうです
何!
名を変えてますが
なぜ黙ってた
彼の希望なので
カルベロか それならこのまま残してやろう
よかった
どうせ重要な役じゃないし
だが初日のパーティーで顔を見なかったぞ
来なかったのです
だからテリーも帰った
何の関係が?
彼と結婚するそうです
あの老いぼれと?
なら私にもまだ望みがあるな
稽古の時間です
ちょっと待った
さっき頼んだ代役を早く断らないと
━ ━ ━
━ ━ ━
稽古が早くすんだら先に帰ってね 6時までに帰るわ
━ ━ ━
カルベロ!
グリフィン!
しばらくだな
今はどこの舞台に?
確定じゃないが━ ━
稽古を見てこいと言われてね
ここのか?
道化がだめらしい 役をもらえるかも 祈ってくれ
ああ幸運を祈る
━ ━ ━
(悲しい音楽)
━ ━ ━
そんな・・・
オルソップさん!

何ごと
どうしたの?
カルベロが!
私をおいてどこかへ行っちゃたの!
━ ━ ━
━ ━ ━
━ ━ ━(テリーの欧州ツアー)
━ ━ ━
━ ━ ━
ラブ ラブ ラブ ラブ ラブ ラブ ・・・・・・(大道芸人になったカルベロの歌声)
よろしかったら 大尉殿お志をぜひ

カルベロ!
ネビル!
いいんだ気にせず入れて
一杯どうです
仕事中なんで
でもいいか
お元気ですか?
かつてないほどに
軍隊はどうかね?
まあまあです
ロンドンにも来れますし
最近テリーには?はい あのあと病気に
今は回復を?
ええ 欧州ツアーも成功で━ ━ ━
今は元気です
よかった
何があったんです?
初めから分かっていたことだ
彼女とは頻繁に?
ええ
よかった そうなると思ってた
時は偉大な作家だ
常に完璧な結末を書く
カルベロ!
お久しぶりです
そうだ いいところで会った よかったらお志を
君が外にいる連中と?
そうです 気前がいい
なぜ君がこんな仕事を
変ですか? 芸に場所は関係ない 街こそ最高の舞台だ
もう行かないと持ち逃げしたと思われる
では
このことを彼女に話しても?
心配するから話さないほうがいい 私はなかなか気に入ってるんだが
大道芸が性に合う
事務所に来たまえ 仕事を世話しよう
そういう件はマネージャーに
でも予定はびっしりです では失礼
━ ━ ━
止めて! 戻ってちょうだい
カルベロ!
テリーこんな所で会うとは
なんたる寄寓
かけよう
そこへ
聞いたんだね
ロンドン中捜したわ
変らないね
そう?
少し大人になった
なりたくない
誰も同じさ
突然消えるなんて・・・
テリーこれでいいんだよ これでいいんだ
そうかしら 分からないわ
大切なものを失ってしまったの 永遠に・・・
失ってないよ少し変わるだけ
まだ愛してるの
分かってるよ (このカルベロの言葉は意味深長だ。何が分かってるのか?アガペーとエロスのことだろう。)
この先もだ
戻ってきて お願いよ
だめだ 前に進まなきゃ
前進だ
じゃ私も一緒に
あなたのためなら何でもする
分かってるよ (この言葉も意味深長だ!愛の宿命か!)
だからつらいんだ
ポスタントさんが舞台を用意するって
お情けは受けない
お情けじゃないわ
演劇史に残る公演にしたいって
大げさな催しは嫌いだ
だが私の健在ぶりを示したい
そうよ
ずっと暖めてきたアイディアがある
一口で言えば風刺ミュージカルだ
友達と二人でやる
ステキ!
彼がピアノを弾いて私はバイオリンを
ステキだわ━ ━ ━
ものすごく面白いんだ
━ ━ ━
━ ━ ━
━ ━ ━
"カルベロ記念公演 全席完売””

お入り
あー テリー 疲れた顔してるぞ
サクラの人達と打ち合わせを 笑うタイミングとか

それほどつまらんのか
ただ 心配なんで
失敗したら二度と立ち直れない
失敗しないさ 客もそのへんは心得てる
お情けの笑いじゃダメなんです 本物の成功を望んでる
昔とは違うことが まだ分からんようだな
それを言わないで
一つ聞かせてくれ
今でも彼と結婚するつもりかね
必ず彼を幸せにします
幸運なヤツだ とても幸せな男だよ
━ ━ ━
ひどいもんだ これがスターの楽屋かね 一晩だから我慢するが

舞台監督です
入って
昔に戻ったようですね
何だい?
出演時間は10分です あとに20組控えてる
歌で始まり最後はミュージカル
ドラムに落ちたら幕を下ろす
引っ込んでからだ
分かりました
〝昔のようだと言われるのは うんざりだ ドアマンとボーイ 舞台監督まで”
入るぞ この楽屋に来るとまるで昔のようだ
少し舞台を見てくる
ほんとに昔のようだ
昔の君は酔っ払ってたがね
酒で勢いをつけてたんだ
だが命を縮めるぞ
芸のためなら仕方ない 入りは?
天井まで大入りだ
ネビルは来ているのか
休暇を取って来た
出演者の顔ぶれを見てみろ スターが勢ぞろいだ
食われそうだな
君に比べりゃアマチュアも同然だ
我々はみんなアマです 死ぬまでアマのままですよ
この年寄りアマが幸運を祈ってるよ
ありがとう
どうぞ
テリー どう見える?
おかしいわ
君の心配はよく分かってる だが酒が必要なんだ
胃の中がチカチカしてるこれを何とかしなきゃ
からだを壊すわ
もう失敗はゴメンだ
失敗したら田舎で幸せに暮らせばいい
ここが私の家だ
劇場は嫌いでしょ
血も嫌いだが 私の血管の中を流れてる
カルベロさん出番です
観客が待ってます
ありがとう
気に入らん 皆に親切にされるほど━ ━ ━ 孤独に感じる
カルベロ
君の優しさもだ

どうして?
さあ 僕にも分からない
替え衣装を
いいよ
私が
━ ━ ━
衣装は向こうよ
頑張ってね
見ないの?
私も舞台が
愛してるわ

本当に?
心から 永遠に
出番です
幸運を
幕を開けて
━ ━ ━
━ ━ ━ノミのサーカス

━ ━ ━
━ ━ ━サクラの爆笑
━ ━ ━
3分超過だ
大ウケで━ ━ ━
おじぎして戻れ
もう一つネタが
終わりだなぜアンコールを
アンコール!
どうする?
まだ15組も出るんだ
ポスタントから電話が
ちょっと待ってろ
なぜアンコールをやらん
次の者を出さないと
カルベロを舞台に出せ
アンコールを

━ ━ ━
━ ━ ━ パントマイム
━ ━ ━
━ ━ ━
これを
どうした?
背中を打った 胸も痛い
医師を呼びますか
急げ
どうしたの?
背中を打った
お医者さまは?
すぐ来る
楽屋に運んで
客に事情を説明してくる
ダメだ 私を舞台に運んでくれ
私とパートナーにとって最高の夜でした 続けたいのですが尻が抜けない
メイクを落とせ
楽屋にソファが?
小道具部屋に運びなさい
他の人は外に出て
カルベロめやってくれたじゃないか
祝いを言いに来たぞ
ヤツは?
小道具部屋です ケガをして
何!
お医者様が
すぐ救急車を
容態は?
心臓発作です
痛みは?
薬で抑えた
明日まで持つか・・・・・・
何て言ってた?
大丈夫?
もちろん 私は雑草だ
刈られてもまた生えくる
喝采を聞いた?
サクラじゃない
昔のとおりだ
これからもそうだ
2人で世界を回ろう
アイディアがある
君のバレエと私の喜劇で・・・
美しいたそがれの中彼は━
愛を告白する
まだ分からない?
愛してるのはあなた
心と頭・・・愛は不可解だ
テリーさん出番です
カルベロ、すぐに戻るわ
先生 私は死ぬんですね
でも初めてじゃない 何回も死んでいます
痛みは?
ありません

テリーは?
彼女が踊るのを見たい
待ってて、━ ━
このまま舞台のそでに運んでくれ
救急車を見てこよう
(カルベロ息を引き取る 安らかな顔で)


”華やかなライムライトの陰”
”老いた者は消え 若き者に代わる”
”バレリーナと道化の物語”
この映画は、老人と若者と若いプリマドンナの愛のロマンだが、イエスとマグダラのマリアのロマンが背後にあるのだろう。これはイエスの受難劇なのだ。
愛は不可解!と道化が言っているが、道化は愛を美化してアガペーしか認めないアホーどもの偽善を嗤っているのだ。
愛はアガペーとエロスが融合されて真になるのだ。道化の素顔とクラウンの顔、喜劇と悲劇、陰陽、明と暗、清と濁、理性と感性、等々、チャップリンは正しい道徳を説明しているのではない。レアリズムなのだ。彼が見た現実や時代の愛の現象の構造を捉えてその本質をイメージ化しているのだ。映画は筋や台詞より、役者の身振り手振りや目の動きやその表情を感じる方が第一義なのだ!書も同様だ、読めないと解らない、と未だに思っている人が大勢だ。書かれている言葉の意味が大事だとも、書かれている言葉も良い意味の言葉を書きたいと思うのも大切だが、書が芸術だとするなら線や構成に込められた感動が第一義なのだ!嗚呼―疲れた!何度言えば分かるのか!感じるのか!説明されて解るものではないが。感性で感覚で感動じないのなら、なぜ書くのか?書かなくても善いじゃないか!
ぼくは、死にかけたのだが、命拾いしてから、もうすぐ1年になる。その時から感じたのだが、ほんとうの愛は、死や永い時やとんでもない不幸という苦難がきて、はじめて分かるのではないか!ということだ。イエスの磔刑や使徒たちの殉教、業病?ジバゴの心臓発作による突然死、ライムライトの中での道化の突然死、等々実際にも、ロマンや映画などの創作でも、そののことを教えているのではないのだろうか?
2021-03-14 16:10:12



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