愛の造形1 チャーリー・チャップリンの映画『ライムライト』のつづきの7
- harunokasoilibrary
- 6月7日
- 読了時間: 5分
稽古に入る前にあらすじを説明する
無言劇だ
コロンビーナが━ ━ 屋根裏で死にかけてる
恋人のハーレクインと道化がそばにいる
彼女は窓からもう一度外を見たいと言う
道化が泣き 彼女がほほ笑む
彼女は道化に━ ━芸を見せてほしいと頼む
道化の見せ場だ
彼女が臨終の時に?
どこまで話したっけ
道化が芸を見せているところへ━ ━
精霊が彼女を迎えにくる
彼女が死ぬ
これが第一幕

第二幕はコロンビーナの墓場だ
月光の中ハーレクインが登場
魔法で恋人を生き返らせようとする
だが失敗
精霊たちが彼に告げる
彼女は墓の中に居るのではないと
そこでテリーが登場 ソロを踊る
そしてフィナーレ
始めよう 初日まで3週間だ
━ ━ ━ ━

━ ━ 無言劇
━ ━ ━ ━
━ ━ ━ ━
━ ━ ━ ━
カルベロ
何だい?
どう?
すばらしいよ
ソロが心配
君ならやれる
祈ってて
”天は自ら助くるものを助く”だ━ ━
テリー!
ダメだわ どうしよう 脚が動かないの!
気のせいだ
違う マヒしてるの
まだそんなことを
行くんだ!
ころんでしまうわ
脚が!
(カルベロがケリーを思いっきり殴る)

早く舞台へ!
見ろ動くじゃないか さあ!
(テリーのソロ)━ ━ ━ ━
神様 最後まで 躍らせてやってください お願いです

舞台裏の天井で人知れず祈るカルベロ
落とし物だ ボタンを落とした いいんだ
カルベロ!
カルベロ!
カルベロ!
カルベロ!
カルベロ!
━ ━
━ ━
カルベロが見あたらないの
ボーイに捜させよう
お席へどうぞ
ポスタント様の隣です

お食事の準備が整いました
さあ 隣に座って
ネビル 君はそっちだ
運命の神に感謝だ
なぜ?
また一緒に座れた
これは罰かもよ
それなら喜んで受ける おめでとう
すばらしかった
つまり軍隊がな━ ━
ネビル入隊だって聞いたが
そうです
志願したの?
いや違う 徴兵されたんだ
ひどいわ
でもひょっとすると━ ━ 近くに配属される可能性も
踊りを?
どうか軍人の願いを断らないで
━ ━
━ ━
ロイヤル劇場の舞台を見たよ
確か1890年の━ ━ ━ ━
その話はもうやめよう
さあ飲むぞ
カルベロ世間の風はどうだね
とても冷たいよ
俺が分からないか?
ありがたいことにね
冗談のつもりか?
君には理解できまい
飲みたまえ ただし向うの隅でな
━ ━
テリーさんがお待ちです
かしこまりました
カルベロは?
疲れて家に帰ったそうだ
すぐに帰らなきゃ あとのことはお願いね
僕が馬車を
━ ━
━ ━
ここからは歩く
(カルベロは酔いつぶれて、自分の家のドアの前で寝ている、しばらくして目覚めたところに二人が帰って来て通りのドアの前で話しているのを静かに聞いてしまった)
彼はもう寝たみたい 大変な一日だったから
私もクタクタだわ
僕も帰るよ
入隊の前に会える?〈恋人でもないのに厚かましい男だ!見かけは紳士だがただの男だ!)
今日の朝発つ
さようなら テリー(ネビルがキスをしようとする)
ダメよ
僕を愛してると言ってくれ
やめて
この気持ちを抑えられない
聞きたくない
君も僕を愛している 僕らは愛し合ってるんだ (聞いているカルベロはドキッとしただろう)
そんなこと言ってないわ
言わなくても態度で分かる
やめて
彼を好きなことは知ってる
(純粋な?読者を失望させて申し訳ないが、ネビルは、若くて元気でスラッとしてハンサムな自分に、若くて綺麗な女が惚れるのは当然だと思っているようだが、(自惚れだ)だいたいの尻軽女はそうだろうけど、この男は綺麗で聡明なケリーもただの女だと思っているのだろうか、普通の男は可笑しなくらい自分ほど魅力のある男はいない、と思っている。それが発情期のオス共通の思い込みなのだ。男から見てもこのような男は吐き気がするが、女は意外とそうでもないようだ。春になると男女がくっ付きたくなるのは自然なことで悪いはずがない。倫理的に正しいから、くっ付くわけではないだろうに!)
だが結婚は間違いだ 君はまだ若い
君の献身は美しい だが愛じゃない
あなたは間違ってる 本当に愛してるの
憐れんでるんだ
憐れみじゃない
いつの間にか心から愛してたの
彼の心 優しさ 悲しみ━ ━ ━ ━(老いぼれ男の悲しみの原因を知らないうぶなケリー)
離れることなんてできない
おやすみテリー
さよなら
(今夜は無理だとあきらめたように見えるが、男の本性はしつこい!ものにするまでは決して諦めないのが普通の男(オス)だ。そのしつこさを愛と勘違いして女は身をまかせるのかも知れない)
━ ━
━ ━
この時のチャップリンは62歳だったが、73歳くらいの役だろうか?身心ともに疲れた老人のように演技している。実際の彼は、73歳のとき若い妻との間に8人目の子供をつくるほどの精力絶倫の男だった。実際と映画とは違うのは言うまでもないのだが・・・
映画でチャップリンは事実とは違う老人の性的不能の淋しさや衰えてゆく技能や男としての魅力のなさを、その悲しみを描いている。ケリーも実在しないような、誠実で、美しく、優しい、清純で聡明な、老人に理解のある、理想の女として描いている。現実なんか彼は描いていないのだ!というより、残酷な現実を土台にして理想の夢を描いたのかも知れない。創作とはそんなものなのか?愛は夢でしかないのだろうか?
そんな真偽のはっきりしない戯言より、映画を観てチャップリンの表現力と思想を堪能しよう!現実があまりにも酷いから、嘘でも美しいものに、人は魅かれ慰めを求めるのだろうか?
2021-03-13 10:26:24



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