愛の造形1 チャーリー・チャップリンの映画『ライムライト』のつづきの4
- harunokasoilibrary
- 6月7日
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電報です
どうしたの?
これを待ってた
いい知らせ?
エージェントに呼ばれた
よかったわね
ようやくこの時が来た 私を冷たくあしらってきたくせに━ ━
私が必要なんだ 思い知らせてやる 私を見くびってきた罰だ バカなまねはしない だが分からせないと
約束は3時だから その前に医者に話しておく
おっと朝食か ニシンにしよう
━ ━ ━ ━ ━ ━
君には仕事はない 君もだ 君も 君も君もだ
あと誰がいる
パーカーさんです
他には
カルベロが3時からずっと
忘れてた呼んでくれ
やあ カルベロ
昨日は悪かった 大事な用で抜けられなくて
仕事が入るかもしれん ミドルセクス劇場で1週間
ギャラは?
カネにはこだわらんほうがいい
かまいません
でもどんな扱いになるんです?
それもこだわるな
つまり スター扱いではないと?
出演すら未確定だ
せっかくだが 2流芸人と同じ扱いで━ ━出演するつもりはない カルベロの名は今も健在だ
もう客は呼べん
では なぜ私を?
私への義理で使うんだ
それはなんとご親切な
率直に言おう 君を半年以上売り込んできた 名前を出しただけで断られる
昔は私が断ったものだ 気の毒だが今の状況を認識しろ
よく分かりましたとも
助けたいんだ協力してくれ
すべて任せます
よく言った!
契約が決まったら連絡する 元気を出せ
カルベロの名が邪魔をするなら━ ━ 別名で出ましょう
それは いい考えだ
━ ━ ━ ━ ━ ━
先生 テリーはどうですか?
中毒症状は抜けた 脚はどこも悪くない
リウマチでは?
違うね リウマチなら心臓に障害が出るはずだ 精神的なものだ
というと?
精神的な障害がマヒをひきおこしている
つまり?
自殺に失敗し━ ━ 無意識にマヒに逃げているのだろう
私にできることは?
自分で治すしかない 精神科医の分野だ
フロイト博士? 何か考えましょう
━ ━ ━ ━
━ ━ ━ ━
お姉さんの話をして
もう全部話したわ・・・仕事がなくて夜の女に
いつ知ったの?
8歳のとき
どうして知ったの?
母の死後姉は私を育て━ ━バレエも習わせてくれた
ある日 見てしまったの
街角に立っている姉の姿を バレエの友人にも見られた
それで 君は?
その場から逃げ出して泣いたわ
それから?
全寮制の高校に入れられ 16歳で中退 その後バレエ団に
姉は南米に行ったきり消息なし
当時は脚の問題がなかったの?
いいえ
じゃいつから?
2年後メリーズが入団してから
メリーズ?
バレエ学校の友人
姉さんを見た友人の1人か
はい
きっとその再会をきっかけに踊ることが━ ━ イヤになったんだ
なぜ?
お姉さんを恥じた気持ちを思い出したから 踊ることまで恥と思うようになったんだ
恥じてなんてないわ
自分を嫌悪してる それが君の問題なんだ
街角で稼いで何が悪い?
誰だって生きるのに必死なんだ!
生きることは戦いなんだ!
だが それもつかの間
この話は終わり
━ ━
恋をしたことは?
さあ・・・恋というより同情よ
面白そうだ 話して
話そうにもよく知らない人よ
勝手に想ってただけ
退院した後のことよ
文具店に勤めたの
彼は客の1人で若いアメリカ人
買うのはいつも五線紙 生佸は貧窮してたみたい
寂しそうで弱弱しく内気でどこか痛々しかった
ある日私が図々しい客を無視したら━━
彼は感謝の意でほほ笑んだ
名前はネビル 作曲家だった 彼の下宿の清掃係りに聞いたの
屋根裏に住んでた 五線紙のために食事も抜いてたみたい
やつれてたわ 時々五線紙を余分に渡したり お釣りを多くあげたりした
気づいてたかしら 仕事のあと彼の下宿へ行き 流れてくるピアノの音に━ ━
酔いしれたこともあったわ
それから?
しばらく店に来なかった
病気でピアノも手放したと聞いたわ
数週間後 彼は青白い顔で来店した 管弦楽用の五線紙をと言って2シリング銀貨を置いた
きっと最後のお金よ 助けてあげたかった お金を貸してもいい 内気な自分と闘ったわ
そして決心した 帰ろうとする彼を呼び止めて言ったの「お釣りをお忘れです」って
「そんなはずはない」「間違いありません6ペンスのお釣りです」
気まずい空気が流れた
そこへ運悪く店主が出てきたの
「何か」
と聞くので
「お客様がお釣りを忘れて」と言うと━その場は収まったの
でも お金が合わないことが━すぐにバレたわ
それで 私はお店をクビに
それから?
バレエに戻ろうとしたら リウマチで倒れて
その後彼には?
5カ月後 彼の姿を見たわ アルバート・ホールでよ
彼の交響曲が演奏されたの
彼を愛してるんだね
何も知らないわ
また会えるよ 間違いない 私には分かる
ある日 彼は君を訪ね━ ━
晩餐会で会ったと言う
すぐ彼だと気づくわ
いや 彼はヒゲを生やしてるからね
彼は君にバレエ曲を書いたと言う
それで君はきづき 思い出を語り始める 五線紙を余分に渡していたことも
その晩2人で食事をする
場所はテムズ川を見下ろすテラス
時は夏 君の服はピンクのモスリン
君の香りが彼を誘う
街の景色が夢のように美しい
たそがれは哀愁に満ち ロウソクの炎が瞳に映る
彼は君に愛の告白
君も彼に愛を告げる・・・
何の話だっけ?
人生を恐れる必要はない 必要なものは勇気と想像力それと少々のお金
なぜ泣く
もう踊れない 脚が動かないのよ
思い込みはやめて闘うんだ
何のために?
分からないのか
すべてのためだ!
人生のためだ!
生き 苦しみ 楽しむんだ
生きていくことは美しくすばらしい クラゲにとっても
まして君にはバレエがあるじゃないか
この脚じゃ
腕がなくてもバイオリンを弾く者がいる 足の指でね
君は闘おうとしない

病と死ばかり考えてる
だが避けれないのは死だけじゃない”生きること”もだ
宇宙にある力が地球を動かし木を育てる
同じ力が君の中にもある その力を使う勇気と意志を持て!
おやすみ
死と同じように避けられないものがある。それは生きることだ。(チャップリン)
There’s something just as inevitable as death. And that’s life.
私は神とは仲が良い。私が対立しているのは人間だ。(チャップリン)
I am at peace with God. My conflict is with Man.
言葉はとるにたらないものだ。一番大きくても「象」としか言えない。(チャップリン)
Words are cheap. The biggest thing you can say is ‘elephant’.
思想だけがあって感情がなければ、人間性は失われてしまう。(チャップリン)
2021-03-07 12:22:01



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