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モノローグ5

  • harunokasoilibrary
  • 6月7日
  • 読了時間: 2分

笑いながら、王子さまは、ぼくに語りかけた。

「ぼくがいなくなったら、きみは悲しむだろう。でも悲しみなんて、長つづきはしない。悲しみはすぐに、いやされる。そのとききみは、

ぼくと友だちになってよかったと思うよ。ぼくたちは離れていても、永遠に友だちだからね。きみは心の底から、ぼくといっしょに笑いたいと思うようになる。・・・・・・」

・・・・・・

「わかるだろ?ぼくのふるさとは、あまりにも遠い。体をもっていくことはできないんだ。重すぎるからね。」

ぼくはだまっていた。

「だけど、体なんて、古くなって捨てられた、ぬけがらみたいなものなんだよ。悲しまないでね・・・・・・。」

ぼくはだまりつづけた。・・・・・・


(『星の王子さま』26 三田誠広訳 講談社 蒼い鳥文庫より)


このお話は1943年に出版された。彼は1944年7月31日コルシカ島から偵察飛行に飛び立ったまま宇宙から帰ってこなかった。(44歳)

彼は結婚はしていたが、彼の伴侶は彼を理解していなかった とぼくは思う、

しかし彼は常人には考えられないくらい優しく賢しこい人だったから、この伴侶や友だちを嘘つきで馬鹿な人たちだと知っていたけれど、

隠語で普遍化してこのとてつもない名作に、彼の苦悩と悲しみを昇華できたのだろう。

彼は不幸だっただろうか、幸福ではなかっただろうが、悲しく淋しかったことは間違いないだろう。

生まれてきて、可哀そうに、と言うべきだろうか?イエスの復活だと言うべきだろうか?

偉人だとか、有名だとか、才能があるとか、他人の評価は、彼の幸せとは関係ないだろう。

サン・テグジュペリがほんとうに言いたかったことは何なんだろうか?いまのぼくにはよく分からない。

2021-01-14 15:11:32

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