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「新緑の頃」(高村光太郎の詩) 作品219

  • harunokasoilibrary
  • 10月20日
  • 読了時間: 1分
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Haruno Kasoi 書 「新緑の頃(高村光太郎の詩)」

 1997年   宣紙・墨・額


青葉若葉に野山のかげろふ時

ああ植物は清いと思ふ

植物はもう一度少年となり少女となり

五月六日の日本列島は隅から隅まで

濡れて出たやうな緑のお祭

たとへば楓の梢を見ても

うぶな こまかな仕掛け満ちる

小さな葉っぱは世にも叮寧に畳まれて

もっと小さな芽からぱらりと出る

それがほどけて手をひらく

晴れれば輝き 降ればにじむ

人なつこく風にそよいで

ああ植物は清いと思ふ

さういふところへ昔ながらの燕が飛び

夜は地蟲の声さへひびく

天然は実にふるい行状で

かうもあざやかな意匠をつくる


と書かれている。


この作品も雑体書を参考に創作された文字で書かれている。

雑体書は空海が唐から伝えた字体であるという。


この詩をどのように表現しようかと思い悩んでいた頃、

目の前の公園の枯葉が、強風に煽られて、空高く舞い上がり、わたしは呆然自失した。

その枯葉たちは、まるで狂喜したかのように、日光に照らされながら舞い踊っていた。

それらは建物の10階まで届くほどであった。

枯葉たちは、啓示のように「わたし達を描くように」と、わたしに囁いた。

不思議な、一瞬の出来事だった。

2018-12-18 09:43:27

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