愛の造形1 チャーリー・チャップリンの映画『ライムライト』
- harunokasoilibrary
- 6月7日
- 読了時間: 4分
現実にまことの「愛」は在るのか無いのか?いまだ未熟なぼくには分からないが、過去の造形作品には「愛」を感じるものが、おもったよりたくさん在るように思う。ここで言う造形作品とは、絵画や彫刻はもちろんだが、映画や音楽や言葉(文学)による作品も含まれている。これから時々、ぼくがそう感じる作品をとりあげて考えてみたいと思う。
「愛の造形1」は、1952年制作のチャーリー・チャップリン(1889~1977)監督、主演、原作、脚本、作曲の『ライムライト』。この映画を1に選んだのは偶然である。何の意味もないと思うけれど、神の意志かも知れない。登場するキャストの姿形や動作、話す言葉などが素晴らしいが、活字にした台詞だけでは言葉の真意は分からないだろう。綺麗な言葉が真の言葉とは限らないし、綺麗でも真の言葉かも知れない。甘いやさしい言葉が受けを狙った綺麗ごとに過ぎないとか、否定的な感想もあるのは商業作品ならやむを得ないことだろうし、肯定しかないような作品は耳触りは善いが、信用できないし、その言葉は嘘だろうと思う。民主主義でなければいけないとか、愛は普遍的な価値だ。戦争は悪だ。平和以外はだめだ。など、芸術作品は観念や概念(イデオロギー)によって良し悪しを決めるより、その造形(イメージ)の良し悪し(優劣)で評価されるべきだ、とぼくは考えている。
音楽や映画は時間芸術だからその造形力を感じるには聴いたり観たりするのが基本だが、以下にとりあげる映画『ライムライト』からのイメージや言葉から「愛」を想像できなければ、その作品鑑賞はほとんど時間の無駄だろう。
『ライムライト』は老いた道化師と若いバレリーナの悲恋物語といわれているようだが、ぼくにはイエスとマグダラのマリアの純愛物語のようにも想える。

「死にたかったのに」
「なぜ死に急ぐ」
「苦しいかね」
「人類は数10億年の進化を経て”意識”を得た その奇跡を君は捨てる気か 宇宙の何よりも重要なものなのに 星に何ができる?
じっとしているだけだ 太陽はどうだ 45万キロの彼方で熱を放っている それが何だ 己の資源を浪費してるだけ 太陽に意識があるか? ないんだ だが君にはある」
「なぜ死なせてくれなかったの」
「命は大切にしなきゃ」
「私は病気なのよ」
「いいかね 詳しいことは知らんが・・・オルソップ(家主)さんの言う病気なら治療すればいい 不治の病気ではない あの病気なら・・・言いたいこと分かるね」
「何のこと?」
「つまり若い娘が独り世間に放り出され・・・病気になる そんな病気なら心配するな 画期的な新薬も出てきた いくらでも相談に乗るよ 恥ずかしがることはない」
「そんな病気じゃない」
「本当かい?」
「ええ」
「じゃ何の病気?」
「リウマチよ5カ月入院してたの」
「なんだそんなことか」
「でも働けない」
「仕事は何を?」
「ダンサーよ」
「ダンサー?」
「エンパイア・バレエ団」
「私はてっきり・・・そうかバレリーナか 君の名前も聞いてなかった」
「テレーズよ テリーと呼ばれてるわ」
「かわいい名だ」
「私も舞台人だ カルベロの名を聞いたことは?」
「あの喜劇の名優?」
「昔のことだ その話はよそう」
「なぜ君は こんなことに?」
「病気のせいよ」
「では治さないと 最高の療養所とはいえんが ここで静養すればいい カルベロ夫人として もちろん名前だけだ」
「ご迷惑では」
「女房は5人いた 1人増えるだけの話だ それにこの年になると プラトニックな友情が一番だ」
中略
「病気だけが原因であんなことを?」
「それと・・・」
(テリーのたった一人の姉が、貧しい両親とテリーとを、娼婦をして稼いだお金で養ってくれていたことを知ったかららしい)
「何だい?」
「すべてが空虚に感じたの 花を見ても 音楽を聴いても・・・何も意味を持たない・・・」

「意味が必要か? 生きることは━「意味」でなく「願望」なんだ バラはバラになりたくて美しく咲く 岩は岩になりたいんだ こんなふうに 何がおかしい?」
(チャップリンのパントマイム!言葉に頼らず現実にあるものを手と顔の表情だけで表現している。真の書の表現に通じるものがある。台詞には名言らしきものがたくさんあるが、きれいな言葉だけでは本当のことは分からない。映画では俳優の表情、身振り、手振り、容姿や、音楽、舞台装置、大道具、小道具などが一体となって表現されているから、もっともらしい嘘の言葉と真実の言葉とが見分けられるかも知れない。見分けられるようになりたいものだが、大変難しい。)
「バラと岩のまねよ」
「何にだってなれるよ 盆栽は知ってる? こんな感じに曲がっているんだ パンジーはこう 不機嫌な花 なぜ「意味」にこだわる必要がある? バラはどこまでもバラ ・・・我ながら名言だ 君の人生は空虚だったというが 今は臨時の夫も家もある」「水を置いとくよ」・・・・・・・・・「おやすみ」
「人生は恐れなければ、とても素晴らしいもんだよ。人生に必要なもの。それは、勇気と想像力そして少しのお金だ。」(チャップリン)
2021-03-03 10:01:15
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