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第24回野のはな書展(2018年4月10日~15日)

  • harunokasoilibrary
  • 6月19日
  • 読了時間: 7分

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ごあいさつに代えて

当会の作品制作の基調は、多様性と誠ですが、

この救い難く歪んだ社会において、

出品者の多様性や誠に対する理解や感受性も偏っていることでしょう。

出品者は、よく頑張ったと思いますが、

どれだけの出品者が、

この救い難く歪んだ世界に対して、自覚的に立ち向かったでしょうか。

芸術に「線の美」や「癒し」や「慰め」を求める堕落に対して、

制作者も鑑賞者も、この社会の歪みの中にどっぷり浸かって、

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もはや、その偏向にさえ気づいていないのかも知れません。

歪みのない、新しい書、新しい鑑賞のあり方を提示できなかった点に置いて、

当会の過去展は、すべて失敗でした。

それでも、懲りずに、会場に足を運んでくださった方々と、

よく頑張った出品者に、心より感謝したいと思います。

「ありがとうございました」

(出品目録掲載)

 

 



第24回野のはな書展謝辞

 24回も繰り返しながら、私の思いは伝わらず、実現しませんでした。それどころか、その思いや願いとは正反対の結果さえ繰り返されたのでした。今回、私は、堪りかねて、ごあいさつに代えてのなかで、芸術は、「美」や「癒し」や「慰め」といった堕落を求めるのではなく、この救い難く歪んだ世界に立ち向かい、歪みのない新しい書や書の鑑賞の仕方を提示するものではないのか、と提言しました。入場者の何人かは、この非常識なあいさつに感じた人がいましたが、出品者はもとより、多くの方にとっても、これは、どうでもいい、無意味な言葉に過ぎなかったことでしょう。

 私は、身心ともに限界を感じながらの制作でしたが、多くの方々の物心両面にわたるご支援のおかげで、何とか今日まで、作品を発表することができたことを感謝したいと思います。

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 もう20年も前になりますか、何の変哲もない私の半切軸に、50万円の価格をつけて売りに出したところ、すぐに、私の教室に通われていた小林綾(栗里)さんが分割でお譲りくださいと言われ、ご購入くださいました。私は安直に買えないようにと、価格を高くつけていたのですが、予想外のことが起こり、少し慌てましたが、月々5万円支払われた1ヵ月目に50万円は冗談です、5万円で結構ですと言いますと、それではあんまりだということで、3ヵ月分、計15万円で妥協することになったのでした。栗里さんはその後も何かと作品をご購入くださり、私の手本も誰よりも愛着をもって扱ってくださったのでした。今回、額装された作品に私が刻した印を使われ、引首印も大切に扱われていることを知って感激しました。もろもろ塾にも倒れられるのではないかと心配になるほど、フラフラしながら、ひとりで、体力のギリギリまで電車に乗って通われていたことを思い出します。

 森かづ子さん宛の手紙を見ていますと、もう忘れかけていた多くのことが蘇えり、涙がこぼれました。何とたくさんの美しい世界に私を導いてくださったことか。まだ御名前も知らなかった頃、私の個展に来られ、最初に作品をご購入くださった時の感激は忘れられません。その後会員になられ、私を世界に知らしめるためにどれだけの労力を使われたことか!いつも、私の新作を待望され、それが私にどんなに大きな励みになったことでしょう。母のデスマスクにたった一人だけ、大きな白いバラの花を供えてくださったのでした。みすぼらしかったデスマスクがいっぺんに華やかになったことを思い出します。私にも大切な私の作品を、たくさんご購入くださり、物心両面で支えてくださりましたが、世界的な芸術家というあなたの期待に応えられない私をお許しください。生死の境を彷徨っていた時、真っ赤なトマトとスイカを送ってくださり、救われたことも忘れられません。あなたの書の表現は、なかなか苦しそうですけれど、光りはそこに見えています。

 川合秀壽先生は、いつも大作を出品くださり、それも書らしい書で、書展の品質を上等にしてくださり、ありがたく思っています。私の邪道の書とは違って、なにかほっとしますねえ。お弟子さんたちや書の先生にも、私や野のはな書展をご紹介くださり、その何人かにもお会いできて、書を愛して居られる様子を感じ、私の作品が少しでも何かの励みになっていることをも知らされ、嬉しく思いました。

 時田麻里さん、小中弥生さんは、いつも静かに参加くださり、野のはなのようにひっそりと咲いている様子が、作品と同じように、堅実で、生命力にあふれ、芯の強いものを感じます。野のはなを土台から支えてくださりありがとうございます。お二人とも、余白がとても美しくなってきていることを感じますが、なぜでしょうか。

 梁島章子さんは、勇気を奮いおこして参加くださり、こころからお喜び申し上げます。その真摯な九成宮の学び方にいつも感動していました。表装も良い趣味で、文字と言葉と書が大切にされていることがよく分かりました。

 保母照子さんは、書を楽しんで学び、書の表現に意欲を持たれるようになってこられてほんとに良かったと思います。これから次第に表現が深まってくることでしょう。

 黒田いづみさんには、何か人とは違った、独特のものがありますねえ。簡単には妥協しない強さをいつも感じていました。少し憎たらしい人だなとも思ったこともありましたが、意志の強い愚直な作品は、野のはな書展には貴重な存在です。

 堀りえ子さんを囲んで、いつも私と野のはな書道会を応援してくださる、山岡悦代さん、安逹昌子さん、加納久江さん、斉藤洋子さんありがとうございます。堀さんは少し元気がありませんでしたが、諸般の事情で仕方がなかったことでしょう。その代り、石原組のみなさんが意欲的に創作に取り組み、その様子に私も励まされて、頑張りました。ありがとうございます。

 山本澄江さん、村井みや子さん、お二人とも個性の強い方々ですけれど、臨書にもそれがよく表れていると思います。人生経験が豊かなのですから、もっとすごい表現が心中にはたまって居られると思います。他者から学び、さらに豊かな作品を創作してください。

 越田民代さんは、今、一番、言いたいことを書かれたのでしょう。字に気力が漲っていましたねえ。遠慮されずに、もっと何点も書かれると良いですよ。

 白石利一さんは、いつもきりっとした、力強い書を書かれます。真直ぐな縦画が気性を端的に表していましたねえ。

 荻野文子さんの作品は、作家の作品のようでした。言葉で表現された「ものがたり」が涙を誘いました。書は、ものがたりを邪魔せずに、しっかりと伴奏していましたねえ。

 空あかねさんは年々、野のはな書展の華のようになってこられましたねぇ。その作品に見られる言葉の豊かさ、色彩の調和、唄のような軽やかさと強さ、文字の変化など、他の出品者も学ぶことがいっぱいあると思います。何人もの人を呼んでこられ、ご家族も協力してくださり、感謝の言葉もありません。あかねさんが現れると、空間の色が変わり、蝶が舞い、花が咲くかのようです。ちょっと大袈裟ですが。

 有本伶雲さんは、いつも元気で、野のはな書展を牽引してくださり、頼もしい限りです。今展は、やや、おとなしかったですが、いつも他を圧倒されています。今回も、空あかねさんと共に、新聞社や9条の会の事務局長さんをよばれたり、大活躍でした。それから交流会の世話等いつもお手数をおかけして、心からお礼申し上げます。

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 植田春汀さんには書展の開催のすべてにわたってご苦労と御心労をおかけして、感謝いたします。忙しいなか、心を失わず、誠の作品を制作されたことは驚異にあたいすると思います。

 最後になりましたが、御協力くださった出品者の御家族やお友達の方々、会員各位、業者の方々に心からお礼申し上げます。それから、私たちを見守り励ましてくれている、今は亡き方々にも心よりお礼申し上げて謝辞といたしたく思います。

(2018年4月・会員つうしん第155号掲載)


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