第23回野のはな書展(2017年4月5~9日)
- harunokasoilibrary
- 6月11日
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ごあいさつに代えて
野のはなのような
小さな書展になりました
新しい思い
新しい世界
何所にあるのでしょう
小さな会場で
ふと出会う作品は
あなたを映す鏡です
代表 春野かそい
(出品目録掲載文)
第23回野のはな書展感想

今回展の基調である「多様性とまこと」について、私の考えたことを少しだけ述べます。
「多様性」とは、自然界の草木や生き物に見られますように、その姿かたちは、大小強弱様々ですけれど、すべては平等に価値あるものとして存在しているという事につながります。空間的には弱肉強食に見えます自然界ですが、そこに時間を加えて見ますと、すべては「いのち」のサイクルの中で無くてはならない存在であることが分かります。その事と同様に、書展に出品された作品に優劣はありません。様々な能力と経験の深浅はありますけれど、それらが、豊かで多様な自然界と同様、書展を活き活きした心の世界にしていると思うのです。この事を出品者に自覚していただき、共有できたら良かったのですが、説明不足で申し訳なく思いました。
「まこと」とは、万葉の頃から江戸時代までつづく、日本の芸術の伝統的、美しさの理念です。『万葉集』の表現が典型的と思われています。平安時代の「もののあはれ」、鎌倉・室町時代の「幽玄」、江戸時代の俳諧観などに通底しています。それは、真実の姿や感情を重んじ、理性と感情の統一を理想としました。野のはなの出品者には、この日本の美の根幹を自覚して、上手下手ではない真実の表現に深く思いを致し、「まこと」を共有していただきたかった。
出品者には、この基調は自覚的には共有されていなかったと思いますけれど、結果的には、作品がそれを実現してくれていました。私には、出品作の一つ一つが、大変魅力的に輝いて見えました。特に関係性の中で作品が誕生していることを実感することができました。亡くなった方との関係、家族との関係、自然との関係、歴史との関係などから、詩が生まれ、書が生まれている事に、私は芸術の意味をあらためて知らされました。ささやかな書展ではありましたけれど、23回も続けてくることができたことを出品者の皆様に感謝せずにおられません。
来年は再び、京都市美術館別館での開催となりますが、この基調を自覚的に共有した多くの出品者が参加することを願っています。
最後になりましたが、今回、出品者が少なく、財政的に大変困難な中、手弁当で書展実現に参加してくださった出品者・会員の皆さんと、カンパしてくださった会員と会員外の方々に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。
(2017年4月・会員つうしん第149号掲載)

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