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創作のすすめ 春野かそい

  • harunokasoilibrary
  • 1月29日
  • 読了時間: 3分

更新日:6月1日

創作には、もやもやとしてはっきりしない何ものかを表現することによって、はっきりと認識し、発見し、一歩一歩、一作一作自己を作り上げていく一面があります。自己発見、自己表現ともいえますが、イメージの世界を現実化していく過程を通して自己をより高く作り上げる自己実現が目的の一つといえるでしょう。

創作は自分の生きた証です。誰にはばかることなく自己の信じるところにしたがって自由に全力で書くのが一番よいのです。あくまでも自分が納得できることが大事なことです。成長にはある種の苦痛が伴います。生みの苦しみといいますか、もやもやしたものがなかなかはっきりと見えてきません。途中で投げ出したくなることもあるでしょう。しかしくじけてはいけません。新しいものはこの世に誕生するのです。そう簡単なはずがありません。簡単なはずがないといっても創作を苦行のように考えなくても良いでしょう。書くよろこびが大切だと思います。

「下手ですから」というような卑屈感も棄てたほうがよいでしょう。下手を出発点にして、自ら感じ、考え、工夫して、苦心することによってより高い自己を作っていけるのです。そして未来を創造していく事業に参加したいものです。

上手下手はたしかにあり上手を目指して努力することはよいことでしょうが、上手とかできがよいことだけが大切なことではなく、自分らしい字が書けるようになることや、ひとりひとりの能力を全開して全体として全ての人が前へ進むこともまた大切なことだと思います。

創作したから発表しなければいけないわけはありません。しかし全ての人が一歩前へ進むためにもまた自己を確認するためにも書展は、多くの人の批判を聞いて客観的に作品を観ることができるもってこいの機会です。書はひとりで学ぶことが基本ではあっても、ほんとうは、過去、現在、未来の全ての人や物につながっているのです。書を学ぶとは歴史につなげるということでもあります。


 創作の手順

1、何を書くか決める。(心の奥底に触れた言葉でなければだめです。)

創作の第一歩は、言葉の意味を理解することから始まります。作品の内容は各言葉の理解の程度によって決まるといえるでしょう。理解といっても辞典にあるような意味を知るということではありません。

2、飾る場所を考える。(床の間、玄関、和室、洋間、展覧会場など飾る場所の部屋の大きさや壁の形を考える。)

3、作品の形や大きさを決め、どういう表具にするかも考える。

・紙のサイズを決める。

・条幅、半紙、色紙、横物(巻子・折帖)な

ど、また軸装か額装か、衝立、屏風など。

4、どう表現するか決める。

メモまたは構想ノートを作り、スケッチをしてひな形を作って、イメージを具体化していく。

筆、墨、紙などの用具も決めていく。特に紙は、表現を決定づける用具ですからよくよく考えて選ぶように。 

5、作品を作り始める。(途中で計画の変更もありうる。)知識を全開していろいろ試してみること。


 思った通りに書けばよろしいが、今まで学んできたことを生かして創作するようにしましょう。知識を全開して一作毎に全力で書くことです。創作するからには積極的にとりくむことです。書の基本や伝統も創作を伴った手の思考があってはじめて体得できるのです。手間ひまかけてじっくり作品づくりにとりくむようにしましょう。            

(1997年7月初稿、会員つうしん第28号掲載、本稿は改訂版)


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