2021年書き初め大会感想
- harunokasoilibrary
- 7月10日
- 読了時間: 2分
おおよその感想は各作品のコメントで述べていますので、ここでは要約だけにしておきます。
書は造形芸術です(異論もあるでしょうが)、造形芸術は形と色とでできています。
書の本質は感動の表現です。それは線質と構成の融合で作品化されます。構成は点画、一字、行、紙面全体など。
書は一般にモノトーンですから色はありませんが、線質が絵画の色にあたります。線質には書者の個性や心の澄濁や本質が表れています。線質は書の最も重要なところです。線質には書者の真実が表れます。嘘も表れますから私は見たくないときの方が多いです。ただし、線質を見分けるのは大変難しい。
規定課題の「癒」は私の個人的な体験から想い付きました。人生で初めて癒されたいと感じたのです。死線をさまよった弱い人間には本当の慰め、癒しは必要なものだと感じました。
死線をさまよう前までは
「『癒し系』という言葉はいつごろ誕生したのだろうか?この言葉自体が世界の、或いは人類の絶望的状況の深刻さを逆説する。・・・」(宮下誠)
「どこかが間違っている。違和感、気持ち悪さ、薄気味悪さが綯(な)い交ぜになった嫌な感じ、どこか作り物めいた白々しさ、彼の音楽(音楽の力を素直に肯定する)によって救われた人も少なくないだろう。しかし、そのような慰めは多くの場合、間違っている。目を背けてはならない。彼の音楽は小市民社会の偽りの幸福感、欺瞞と瞞着に根ざしている。慰めが所詮は弱者に用意された嘘であり・・・音楽の聴き手の痴呆化を後戻りできないところまで推し進めたカラヤンの負の遺産は未だに消えていない。カラヤンが彼以後の人心に刻み込んだ歪んだ価値観の一元化は根の深いものだ。そのようなものの考え方、世界の捉え方は、社会的、政治的勝者・強者と共同し、純正な文化環境を破壊し、誠実な知性を圧殺しようとする。」(『カラヤンがクラシックを殺した』宮下誠)
といった宮下誠氏の考え方に私は共感していました。今も共感していますが、本当の治癒(心と身体の癒し)と慰めは生きつづける力になると思います。それが落とし穴なのかも知れませんが、凡人には分かりません。
(2021年2月・会員つうしん第172号掲載)


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