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2019年書き初め大会感想

  • harunokasoilibrary
  • 6月28日
  • 読了時間: 2分

 今年の規定課題は、「響」(ひびき)であった。書初め参加者は、制作にあたって、この言葉に対していろんな感想を持たれたことだろう。その百人百様の考えや感じ方は、出品された作品に、その片鱗をとどめている事だろう。しかし、それを正確に読み解くことは、僕には不可能な事だが、例年どおり、軽い気持ちで楽しく作品を見せていただいた。したがって、作品に対する僕のコメントは、その程度の、小鳥の羽毛のように軽く薄っぺらなものであるから、そのようなコメントに一喜一憂することは、ばかげたことであると思っていただきたい。

 出品作品のすべてが、言うまでもない事だが、真心のこもった良い作品ばかりであった。別の言葉に翻訳すれば、丁寧な仕事の作品ばかりであった、と僕は感じ、少し安心もしたのだった。それは、書初めに出品するくらいの方達なのだから、当たり前の事ではあるが、もし、そうでない作品に出合ったら、僕は、何と言えば良いのか、がっかりして失望した事を、どのように取り繕って、多少なりとも誉めたりして、嘘を言わねばねらないのか、と内心恐れていたのであった。

 もとより、書を学ぶことも、作品を書くことも、真面目な行為である以外にはありえない。それは、真心を込めて書かれたお手本の一点一画を丁寧に読み取り、なぞるようにして練習し、心を全開して形造くられた字の姿を丁寧に感じとり、分析し、再現することで、人間性の美しさに触れ、人の心の豊かさを自家薬籠中の物にする行為だから。そうして学んだ事を基礎にして、自分の作品も、ただひたすら、丁寧に、真心を込めて仕事する以外に道はないのだ、それ以外に価値あるものなど何も無いのだ、と僕はこの頃、強く思うようになってきた。そして、今回、出品作品を見て、少し安心したのであった。

 僕は、昨年、欧州で、様々な事物や人びとに出会ったが、犬養道子さんの次の言葉が、僕の響きの感じに近いのではないかと、今、思っている。

 「出会うとは、心に共感を、もしくは問いを、おのずと湧き起させずにはおかない、そんなひびきがしみじみと伝わって、これまで知らなかった、新しい対話が、相手との間に芽生えて来る、そんなことではないか・・・」(『私のアメリカ』犬養道子より)。今年の野のはな書展も楽しみである。

(2019年2月・会員つうしん第160号掲載)

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