2008年書き初め大会感想
- harunokasoilibrary
- 4月26日
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更新日:6月1日
いつもの事ですけれど、私は畏(おそ)れという重荷を背負って出品された多くの作品の前に立ちました。そして、いつもの様に、喜びを持ってその重荷を下ろしました。私のような未熟な者が、一人の人間の書いた文字を、正確に深く読み解くなんてことはとても出来るものではありません。ですから、ここで述べていることは浅い表面的な感想にすぎません。私は書の表現のすばらしさをこれらの作品から教えられ、そこで教えられ学びとった事を、また出品者に還元しようと思います。
書は文字や文章をかく芸術です。それは、心の中にある言葉の意味を、文字や文章という目に見える形にしながら完成して行く作業です。またそれは、線を引くという行為によって時間の流れの中で形づくられていきます。言葉が生まれてくる複雑な精神活動とそれを文字に造形する線を引くという行為とのあいだには密接な関係があります。特に毛筆は、線を立体的に表現できますから、言葉の深い意味を象徴的に表現できる可能性の大きいすばらしい道具です。
心の中の様ざまな思いは、他人には計り知れないものです。人の心の複雑な思いは、生まれてから今日まで歩いてきた道の中で深く精神と身体に刻みこまれて来たものでしょう。しかし、経験は豊かであっても、それがそのまま表現されるわけではありません。書によって一つの言葉が形づくられるとき、線を引く行為の中には、書き手の言葉に対する理解の深さが象徴的に表現されます。それだからこそ、書くことによって、浅はかな自己に気づいてさらに自己を深めていくことにもなるのでしょう。
書というものは、文字を象(かたち)づくる一本の線に、生きて来たすべての精神活動を込めることが出来るすばらしい芸術なのだと思います。心のこもった豊かな出品作品の多くが、それを私に再確認させてくれました。
(2008年2月・会員つうしん第94号掲載)


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