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2006年七夕書道大会総評

  • harunokasoilibrary
  • 4月14日
  • 読了時間: 2分

更新日:6月1日

 現代では、短冊や色紙や団扇の作品は芸術作品というよりも、趣味的な世界の遊び事といった感じで軽くうけとめられています。紙面が伝統的な形ですので新しい現代的な表現には向きません。しかし、手軽にかけますので、俳句や短歌の好きな方にはちょうど好い大きさかもしれません。

 このような固定観念は捨てると良いでしょう。芸術作品の価値が作品の大小で決まるわけがありません。

 伝統的な形のうるささに耐えながら私は作品を見つめました。全体を眺め、書き振りを追っていますと書き手の息づかいが伝わってきます。あくまでも想像に過ぎませんけれど、世界に対する書き手の姿勢が見えてきます。それはとても貴重なものです。出品されたそれぞれの作品は味わい深いものばかりでした。

 今回私は、十年もの間、めざましい上達もなく、こつこつと修練されてきた、決して上手と言えない何人かの方の作品に、その方独自のスタイルと言ってもよいものを感じました。これは素晴らしいことです。スタイルがあれば世界を表現することが出来ます。この方たちの存在は、書は小手先のテクニックではないことの証明でもあります。自分の目で見、耳で聴くことの出来る人のみが独自のスタイルを発見することが出来るのではないでしょうか。

伝統そのものである形式から新しいスタイルの作品が生まれつつあるということに私は驚いています。それは、世界を変革するといったものではないかもしれませんけれど、かけがえのないひとりの人間の存在の魅力を感じずにはいられません。

(2006年8月・会員つうしん第85号掲載)


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