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汝はそれなりシリーズ
2003年-2004年

未完の作品です。ここには文字はかかれていません。だから一般的な意味での書作品ではありません。そのようなものを書展に出品することにためらいもありました。しかし書を学んできた私にとってこの作品は、書の延長線上に必然的に出現してきたものです。その意味では書作品といってもよいかもしれません。書でなければ絵かと問われれば、絵であるとは即答しかねます。  さて、私は最初ことばや文字以前のもの、根源的なものの存在を感じ、それを形にしたいと思いました。また、非現実的な夢想にすぎませんけれど死者と話がしたい、こちらからあちらへ、あちらからこちらへと往ききしたい。そして死者と一体になりたいと強く願ったのでした。  現象の世界を様ざまな点と線で構成してゆきますとあちらの世界らしいものが見えてきました。それは死の世界というよりも、別のもう一つの世界のようにも感じました。  ところで、タイトルの「汝はそれなり」はサンスクリット語でTat twam asi (タット トヴァム アシ)と言います。タットは「それ」、トヴァムは「汝」、アシは「である」という意味です。  まだはっきりしませんが、それ(タット)とは、私が幼少年期に強く感じたことのあるあの世界のことかもしれません。これは現実にあったことです。

〈ブログ春野かそい記念館より〉
私は2001年の個展の失敗後、2002年には、書作品らしいものをほとんど書いていない。ようやく、2003年から2005年にかけて非文字作品を描きだしたが、この4年にわたるスランプは私に取り返しのつかない傷を残したように思う。この間、焼き物の制作に没頭してはいたが、これは、苦しさからの逃避だったのかも知れない。そうだとしても、無償で仕事場や道具や材料をご提供くださり、私を援け励ましてくださった、京都、清水の森陶器館の森さんご夫妻への言葉では表せない感謝の気持ちは永遠に変わることはないだろう。

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